064
-鬼畜ネットワーク-
第二次世界大戦でユダヤ人六〇万人を虐殺したヒトラーは何を隠そうこの俺である。
罪もない民衆を虐殺して苦しめたローマの暴君ネロは何を隠そうこの俺である。
焚書坑儒をした秦の始皇帝は何を隠そうこの俺である。
銀貨三十枚でキリストを売ったユダは何を隠そうこの俺である。
時空を超えたあらゆる陰謀の中で、さらに最悪の状況を導いたのは全て、
ベトナム,カンボジア,中東,アイルランド,アフガニスタン,ユーゴ,ボスニア=ヘルツェゴビナ,チェチェン・・・
現在も続く全ての紛争をこじらせたのは何を隠そうこの俺である。
人の歴史が続く限りこの意識、村崎百郎は終わらない。
一九二〇年代セントルイス、ヒヒノケツ源流でサソリに刺されたのは何を隠そうこの俺である。
俺は傷ついた星雲を横切って太古の地球にたどり着き、
湿った沼地でサルどもの股間に張りついて奴らを人間に退化させたウィルスだ。
村崎百郎は終わらない。
ただ歴史の中でその体をくねらせた移動するだけだ。
悪意の介在する全ての時空間には俺の妄想神経が届いてる。
村崎百郎は時空を超えて存在する悪意の総体である
065
アナルオナニーの世界
村崎百郎/中卒&シベリア生まれ。単なる馬鹿。ちんこがとんでもなく太くて臭い。幼少の 頃から色情霊とアナル電波に取り憑かれて10歳の頃から押し込み強盗まがいの下着泥棒をしながらアナルオナニーに励み、ただの一度も捕まることなく現在に 至る。かれこれ30年以上もアナルオナニーをしながら一度も痔になったことがないのが自慢。最近はエネマグラを愛用。
一人前の男が趣味でアナルオナニーをたしなむのは世界の常識である。しかし驚いたことに、いまだに「大の男がアナルオナニーなんて、こっ恥ずかしい真似ができるかよ!」と言って、肛門愛撫がもたらすトロけるように甘美な悦楽世界を真っ向から否定する時代遅れの“男らしい”腟穴性交主義者がいると いうから、あきれたものだ。確かに、大の男が部屋で一人で四つん這いになって尻を高々と上げ、自分の尻穴にバイブを入れてアナルの快楽に身悶えしたり、恋 人や風俗嬢に向かってナマ尻をつき出してアヌスをヒクヒクさせながら「頼むからもっとオレのアヌスを奥の奥まで舌でホジってナメてくれェ〜!」と哀願する 姿は男として情けなく、実にみっともない行為に思えるかもしれない
066
「あなたも私のこと監視してるんでしょ!」
ある夜更けのことだった。残業で疲れて帰宅し、軽く夕食を済ませるかとコンビニに買い出しに出かけた時、見覚えのある黒髪の女性と目が合った。
同じマンションに住んでいる工藤さんだった。工藤さんは長い黒髪の女性で、入居したての時に軽く話をして以来、何度かすれ違ったことがあった。
その工藤さんが、何故か鬼気迫る表情で僕のことを攻め立てるのだった。
何となく美人だとは思っていたものの、監視などはしていない。今朝の出勤時にすれ違いはしたが…。突然のことに驚きながらも会話を試みる。
「一体何を言われているのかよく分からないんですが、勘違いじゃないですか?」
「佐藤さんと谷さんとグルになって!今朝も私のこと見てたんでしょ!」
「いやそれはたまたますれ違っただけで……。」
佐藤さん、谷さん、というのはいずれも同じマンションの住民だ。二人ともお年寄りで、家族と住んでいる様子はなかった。孫くらいの年の差だからだろうか、何かとよくしてくれており、すれ違うと話をする間柄になっていた。
「あの人達がそんなことするわけないじゃないですか。僕はこれで。」
067
残業で疲れていることもあり、早く休みたかった僕は逃げるようにそこを後にした。
その後も部屋の外で人の気配がしていたが、その日は酒を飲み、無理やり寝た。
◇
翌朝、出勤時に再び工藤さんを目にした。
マンションのごみ捨て場のところで、今度は佐藤さんともめていた。
キンキンとした声がよく響き、やはり監視やストーカーがどうのと喚き立てている。
70代と思われるおばあさんの佐藤さんは、あくまで笑顔で対応していた。年の功というやつだろうか。臆病な僕は遠巻きに見ながら会社に向かった。
その日以来、日を追うごとに工藤さんは荒れていった。
若い頃はダンディーだったろうと思われる長身の谷さんにも罵声を投げかけており、とても見ていられなかった。
そんなある日、佐藤さんとごみ捨て場で一緒になった僕は、工藤さんのことについて切り出した。
「最近工藤さん、少し変じゃないですか?僕もこの前夜中に絡まれちゃって……。」
「そうね、私も最近よく話し掛けられるの。私はあまり気にしてないけど、人によっては心の病で変な妄想に取りつかれちゃうことがあるみたい。とにかく心配ね。
068
さすが歳を重ねている人は余裕が違うなと思う。そう聞くと僕も工藤さんのことが心配になってきた。管理人に相談でもしてみるか……。
そんなことを考えたものの、結局僕が管理会社に連絡することはなかった。
しばらくして工藤さんを見ることがなくなり、仕事が忙しくなったこともあって彼女のことが意識に上らなくなってしまったからだ。
佐藤さんや谷さんと話す機会があったものの、彼女のことについて管理会社に連絡した人はおらず、今どうしているのかも分からなかった。
◇
水が臭い。
それに気付いたのは、工藤さんを見なくなって1ヶ月ほど経ってからだった。
会社から帰ってシャワーを浴びている時、シャンプーに混じっておかしな臭いが鼻をついた。
シャワーヘッドが腐ったのかと思い、蛇口に切り替えたがやはり臭い。
2日様子を見たものの、家で出てくる水が皆臭くなったため、管理会社に連絡し、調べてもらうことにした。
家の水が臭いため、しばらく食事は外食で済ませることにした。
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駅前に商店街があるため、食事のバリエーションに困ることはない。
むしろ近所を開拓するチャンスか、などと無理なプラス思考をしながら入った定食屋に、僕は謎のポスターが貼られていることに気づいた。
最初に見たときはストーカーの相談窓口かと思ったが、よく見ると内容はかなり違う。
ポスターにはこのようなことが書かれていた。
「集団ストーカー犯罪(監視・嫌がらせ)について知ってください!
1. この人の行動を監視して!
2. あの人が不快になるような言動を繰り返して!
3. あの人の家の近くで待ち伏せや見張りをして!
集団ストーカーは、上記のような嫌がらせを繰り返し、ターゲットを精神的に追い詰めます。依頼があっても、絶対に協力しないでください!
〜集団ストーカー被害者の会〜」
一見犯罪被害者支援のように見えつつも連絡先が書かれておらず、またどことなく怪しい雰囲気を醸し出すポスターに、僕は不気味さを覚えた。
工藤さんのこともあり、胸騒ぎがした僕は、集団ストーカーについて調べてみることにした
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なまか?
071
集団ストーカー。自分が誰かに監視されている、周囲に嫌がらせをされている、といった被害を訴える人がインターネットには一定数いる。実際にコミュニティの中で嫌がらせをされていた事例もあるものの、多くは周囲が何者かに依頼されて自分を監視している、家の前で騒音を立てている、といった妄想の類のようだ。
工藤さんもこれだったのかも……と思いながらさらに調べていると、恐ろしいことが分かった。個人であれば一人の妄想で済んだものが、ブログやSNSで繋がることにより、集団の妄想になっているようなのだ。
つまりこんな具合だ。
A「今日も家の前にピザ屋のバイクが止まっています。私のことを監視するために違いありません!問い詰めましたが無視されました。」
B「私も似たような経験をしたことがあります。マンションでよくすれ違うのですが、わざとすれ違っているとしか思えません。」
C「今日も来た新聞配達、音がうるさい!家の前だけうるさくしてるんですよね。」
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ひどい場合には、集団ストーカーをしていると思われる人物の写真がアップされていたりする。隠し撮りしたものだろう。
と、集団ストーカーについて調べているうち、あるブログの写真に見覚えがあることに気付いた。
「あれ、この角のレストラン、うちのマンションの斜め前だ。レストランから出てきている黒髪の女性……ひょっとして工藤さんじゃないか……」
ブログの他の写真も確認したが、工藤さんに間違いなかった。何者かが工藤さんを盗撮し、アップロードしているのだった。
写真には同じような妄想を抱く人々が集まり、コメント欄でやり取りをしていた。
HN:イナエ
「今日もストーカー女は私がよく行くレストランで食事。証拠として写真を撮っておきました。」
HN:イナエ
「今日はストーカー女に絡まれた。監視だって?監視してるのはそっちのほうでしょう?」
HN:ハヘロ
「あいつらからの干渉が強くなっていますね。このままだと実力行使されるかも。その前に仕返ししてやりましょう。『始末』するしかありませんね。」
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ブログのコメント欄に戦慄していると、スマホに着信があった。管理会社の担当者からだった。
担当者は焦った様子でこう言った。
「あ、あのすみません。上司には伏せろと言われたんですが、これは言っとかなきゃと思って……。他の住民の方にも水が臭いって言われたんで、マンションの貯水タンクを調べてみたんですよ。」
電話をしながら画面をスクロールする。するとまた別の人物の写真がアップされていた。
――僕だった。
HN:イナエ
「今日はストーカー男がストーカー女のことで話に来た。私達の反撃に気付いた様子。」
HN:ハヘロ
「気づかれてしまいましたか。このままじゃあいつらに仕返しされるかも。その前にこの男も『始末』しましょう。」
耳に当てたスマホからは、担当者の震えた声が流れてくる。
「あの、聞いてます?そしたら……これ、あまりショック受けないようにして下さいよ。髪の長い女性の死体が入っていまして……。」
部屋の外に人の気配がした。
ドアから覗くと、老人が二人立っていた。
◆
「佐藤さん」、「谷さん」……
「イナエ」、「ハヘロ」……
『始末』……
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